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ホイチョイプロダクションズの東京コンシェルジュ 最近東京でちょっとしたブームの鉄板焼き店。ルーツはお好み焼きだって、知ってました?
 料理人が客の目の前で素材のカットから盛りつけまで調理のすべての行程を見せる「鉄板焼き」は、エンタテインメント性の高い料理として、また器用な日本人にしかできない料理(なにしろ失敗は絶対に許されないわけですから)として、昔から国内よりむしろ海外で人気でしたが、なぜか近年、東京でもちょっとしたブーム。2005年に開業した東京プリンス・パークタワーやコンラッド東京にも、鉄板焼き店が入っていますし(高級ホテルに鉄板焼きは業界の常識のようです)、西麻布の『アヒル』や、新橋の『円居』などのような自由なスタイルの鉄板焼き店も続々誕生。
小平一雅 恵比寿の『ポルセッコ』のように、イタリー料理店なのに鉄板焼きカウンターを設ける店まで現れています。
今回はそんな鉄板焼きのお話です。

した鉄板の上で牛肉を焼くというのは、アメリカには昔からあった調理法。ことに焼きたてのステーキを一度に大人数分作るときに使われていたようです(ほら、マクドナルドでもパテは鉄板で焼いているでしょう)。が、客の目の前に鉄板を設置し、そこで肉を焼いて見せるというのは、日本オリジナル。このスタイルを発明したのは、戦時中から神戸・三宮でお好み焼き店として営業していた『みその』。同店が終戦後、お好み焼きの鉄板を使い、客の目の前で牛肉を焼き始めたのが鉄板焼き事始め(当時は鉄板は薪で熱していたそうです)。このスタイルはたちまち神戸在住の外国人の間で人気を呼び、鉄板焼きはお好み焼きと一線を画す高級料理として定着。肉の味つけは塩・胡椒のみ、サイコロ状に切って、つけ合わせはモヤシと玉葱、締めはガーリックライス、という今日の鉄板焼きのスタンダードは、すべてこの店が確立したものです。

板焼きでもう一店忘れてならないのが、日本橋『紅花(ベニハナ)』です。戦前から日本橋で甘味喫茶として営業していた同店は、終戦後、洋食に商売替え。1955年には同じ日本橋に鉄板焼きの店『紅花バーベキュー』を出店。5年後の1960年には神戸の『みその』も新橋に支店を出店(現在)し、その前後から鉄板焼きは東京にも徐々に普及してゆきます。特に店が集中したのが、進駐軍のアメリカ兵が多く集まっていた六本木で、1964年には『ステーキハウス・ハマ』、翌年の1965年には『瀬里奈』の鉄板焼き部門『モンシェルトントン』(名付け親は遠藤周作)が相次いでオープン。乃木坂から飯倉までの外苑東通りにはステーキ店が10件以上並び、当時は『ステーキ通り』と呼ばれていたと言います。

花は1964年、ニューヨークに出店。そのニューヨーク店では、客の目の前で肉を焼くスタイルをさらに発展させ、コックならぬクッキング・ウェイターが、木製の塩・胡椒入れを器用に振り回してリズムを刻みながら味をつけたり、肉を飛ばして皿に盛ったりする派手なパフォーマンスを見せることで、アメリカ人に大ウケ。北米のみならず、全世界に日本の鉄板焼きを知らしめる上で、大きな役割を果たしました。
 東京の高級ホテルには必ず鉄板焼き店が入っていますが、それは、外国人観光客の多くが、鉄板焼きこそ代表的な日本料理と思っているから。『紅花』の功績です。

本には昔から、鮨・天ぷらといった対面調理の伝統がありますが、その鮨・天ぷらでさえ、料理人の手元と客の目線の間には必ず段差があり、調理の様子をすべて見ることはできません。ところが、鉄板焼きはすべてが丸見え。調理人は目の前の客と会話しながら調理を進め、たとえば、若い客やお酒が進んでいる客には塩を多めに、逆にお年寄りには塩を控えめに、というふうに、味付けをカスタマイズ。そして作った料理は1秒のムダもなく客の手元に―最近は、こうした鉄板焼きのダイナミズムが、若い料理人に改めて見直され、鉄板焼きを志す料理人が増えているのだそうです(但し、派手なパフォーマンスは日本国内では眉をひそめる客も多いので、パフォーマンスを磨く料理人は皆無のようですが)。

板焼きは、言ってみれば肉の表面の繊維を均等に面で焼いてつぶし、肉汁を中に閉じこめる調理法(炭焼き原理主義者は面で焼くより、炭の上で炙った(グリルした)方が肉は絶対旨く焼けると主張していますが、これは好みの問題でしょう)。低い温度でもたもた焼いていると肉汁が外に出てしまいますし、高い温度で焼きすぎると肉が硬くなってしまいますので、温度のコントロールは極めて重要。
 02年以降、鉄板ガスではなくIH電磁調理)で熱する鉄板焼きシステムが普及していますが、IH鉄板は、鉄板が最大温度に達するまでは時間がかかるものの、一度上がった後は、温度をコントロールしやすいのが利点。料金もガスよりずっと安上がりで、消防法もクリアしやすく、IH鉄板焼きシステムの普及が、最近の鉄板焼き流行の一つの原動力となっていることは間違いありません。

ころで、鉄板焼き店では、必ず肉の焼き方の好みを訊かれますが、ここは一つ、自分の好みを言わないで、「その肉に一番合った焼き方で」と注文してください。肉のとり扱いは、調理人によって案外考え方が違うもので、霜降りの肉は焼きすぎると脂が溶けて肉の味がしなくなっちゃう、と考えるヒトもいれば、逆にサシにも火を十分通して溶けさせた方がおいしくなると考えるヒトもいます。目の前の料理人と対話しながら、ご自身の舌で真偽をお確かめになってはいかがでしょうか。

近年オープンした主な鉄板焼きの店



KUROSAWA
『鉄板焼き KUROSAWA』(東京都中央区築地2-9-8 TEL:03-3544-9638)は、黒澤明の遺族が経営する蕎麦・うどんのチェーン『黒澤』が、築地の裏通りの1927年築の由緒ある木造民家を改造して作った和牛の鉄板焼き専門店。純和風の建物で、店内も昔の造りをソックリ活かした和風テイストで、カウンターもウェイティング・バーもすばらしい雰囲気。料金は夜のコースが8400円、10500円、13650円、18900円。ランチには限定10食のハンバーグ(3360円)もあります。

うかい亭
『銀座うかい亭』(東京都中央区銀座5-15-8 TEL:03-3544-5252)は八王子に本拠をおく『うかいグループ』が2003年暮れ、銀座の日産本社前に出した大型鉄板焼き店。新潟十日町の豪農の家を解体して持ってきた豪華な内装が見事。

アヒル
広尾日赤商店街の『アヒル』(東京都港区西麻布4-22-10 TEL:03-5766-2020)は、コースには必ずカレーが入るほか、ハンバーグ(1890円)が人気を呼ぶなど、今日的鉄板焼きブームの先駆けとなった店。プリフィクスのコースが4095円から。

紅花
『紅花』を創業し、鉄板焼きを世界に広めたのは青木湯之介(1906〜79)。有名なロッキー青木はその息子。1950年開店の『紅花バーベキュー』は今も『紅花別館』(東京都中央区日本橋1-2-15 TEL:03-3271-0600)として営業中。

銀座うかい亭
『銀座うかい亭』の電磁式鉄板。お客様4人に対して鉄板1枚。その下には4基のIHが通してあり、それぞれ温度調整が可能。最大温度は300℃以上。肉だけでなく、野菜も海老もアワビも、旨味を逃さず調理できます。

更新日2005年10月2日
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