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 紅茶は基本的には、熱帯地方の農作物。季節による収穫や味の変動は少ないものですが、インド北部・ヒマラヤ山麓の紅茶の産地、ダージリン地方だけは、冬は雪で閉ざされるほどの高地で、日本に似た四季があり、ここで穫れる紅茶は、4月末から5月いっぱいにかけて出回る一番摘み(春摘み)、6〜7月に出回る二番摘み(夏摘み)、秋に入ってからの秋摘みと(一度摘んでも同じ芽からすぐに葉が出るので、それを何度も摘むわけです)、季節によって味が異なり、その違いが重要視されています。

小平一雅 中でも、紅茶好きの間で、とりわけ珍重されているのが、春の一番摘みです。
 今回は、5月の紅茶専門店をそれ一色に染める、ダージリンの一番摘みのお話をいたしましょう。
茶好きはよく「紅茶はセイロンに始まってセイロンに終わる」という格言を口にします。インド南端の海上に浮かぶセイロン島は、北海道より一回り小さな島に2500mを超える山と標高が異なる500以上の茶園(エステード)があり、ウバ、ヌワラエリア、キャンディ、ディンブラ、ルフナ(いずれも地方名)と、個性の違う葉を何種類も産出しているからです。

のセイロン島に緯度的に近い、インド半島最南部で穫れるのが、最近日本でも注目を集め始めたニルギリ。個性派揃いのセイロン紅茶と違い、ニルギリはクセや渋みがなく、味は一番マイルド。そのため、どんな紅茶とブレンドしてもOK。アイスにしても、フルーツと一緒に淹れて、オレンジ・ティーとかレモン・ティーにしてOKと言われています。

方、インド北部にあるアッサム平野で穫れるのが、アッサムです。インドの紅茶の年間生産量は約100万トン。その半分がアッサムで穫れると言います。パンチのある渋みとズシンと重いコクのある味が特徴(従って、アイスティーには向きません)。イギリスの硬水で淹れると渋みはいくぶん薄まるそうですが、そのイギリス人でさえ、アッサムを飲むのはミルクティー。朝の目覚ましに最適の紅茶です。

して、これらの産地をさし置いて、誰もが紅茶の最高級品と認めるのが、ヒマラヤ山麓の高地で穫れるダージリンです。この地方だけで、茶園はジュンパナ、キャッスルトン、プッタボン等90を数えますが、総生産量はアッサムの50分の1の1万トン。それだけダージリンの茶葉は貴重なわけで、紅茶通はダージリンをボルドーのシャトーのように茶園別に飲み分けると言います(高級な紅茶は、ワインやシングルモルト・ウィスキーと同様、一つの茶園の葉だけで構成されています)。

ころで、紅茶にはクオリティ・シーズンという言葉があります。これは「その品種の紅茶が一番おいしくなる季節」というほどの意味。たとえばニルギリのクオリティ・シーズンは1、2月。セイロンのヌワラエリアも同じく1、2月。ウバは8、9月。ただし、ニルギリにしてもウバにしても熱帯地方の農作物なので味にビックリするほど季節差はありません。一番差があるのは、北の高地で作られるダージリンです。

ージリンのクオリティ・シーズンは一般に、5月末から6月初めにかけての二番摘みの走りの頃と言われます。この時期のダージリンは、爽やかな香りがブドウに似ていることからマスカット・フレーバーと呼ばれ、珍重されています。
 が、それよりさらに珍重されているのが、4月末から5月いっぱいにかけて出回る一番摘み(ファースト・フラッシュ)です。ダージリンがその年最初に摘まれるのは、4月の初め。紅茶の葉は、リンゴの切り口が放っておくとすぐにサビ色になるのと同じように、摘まれた瞬間からすぐに酸化して色が茶色になり始め(酸化を促進するために、葉をよじったりします)、発酵はワインやチーズよりはるかに早く完了。従って、4月の初めに摘まれたダージリンの一番摘みが市場に出回るのは4月末。そして今がちょうどその盛りというわけです。

ージリンの一番摘みは、茶葉が青っぽく、水色は黄金色に近い薄茶色。味は淡泊ですが、香りが強く、飲むと日本茶のような爽快な渋味があります(日本茶の好きな女性はダージリンの一番摘みも好きなはすです)。そして→二番摘み(セカンド・フラッシュ)秋摘み(オータムナル)と進むに従って色が濃く、味はまろやかになり、代わりに香りが薄れてゆきます。
 ちなみに、紅茶通が、一番摘み・二番摘み・秋摘みの違いにこだわるのは、ダージリンとアッサムだけ。それも、アッサムの一番摘みは市場に出回ることがなく、二番摘みがほとんどなので、すべての味の違いが楽しめるのは、実質、ダージリンのみと言えます。

らに言えば、イギリス人は1年を通じて同じクオリティの紅茶が飲めることを重視するので、茶葉を正確に量るとか、くみたての水を完全に沸騰させるとかいった、いわゆるゴールデンルールにはこだわるものの、一番摘み・二番摘みといった季節の違いには案外無頓着。それに対し、ヨーロッパのもう一方の紅茶大国フランスは、季節感にはこだわるのに、淹れ方については案外無頓着。ですから、ダージリンの一番摘みの季節感を味わうのでしたら、フランス系紅茶専門店に行かれた方がよろしいかと存じます。
 ちなみに2004年の茶葉の出来は、ほぼ平年並みだそうです。


※『日本紅茶協会』とは1939年設立の紅茶関連団体。この団体に認定された店は、1.味についての管理がしっかりなされている 2.紅茶のメニューがホット、アイス合計で5種類以上 3.スタッフの紅茶サービス経験が1年以上 4.紅茶の質問に対応できるスタッフがいる――等の決められた条件を満たしています。調査は3年ごとに行われます。
リニューアルされた日本橋高島屋の、ブランド店が集中する2階、フェンディとコーチの向かいに誕生した、「20世紀最高の料理人」ジョエル・ロブションによる世界初のサロン・ドゥ・テ『ラトリエ・ドゥ・ジョエル・ロブション サロン・ドゥ・テ』(TEL:03-3211-4111)。経営は六本木ヒルズ内のレストランと同じく、ピザのフォーシーズ。新店のメインはスイーツですが、六本木店と同様、バラエティ豊かなスモールポーションの食事をとることも可能。営業時間や休日は、高島屋と同じです。

創業10年、都内に9店舗を持つ『レピシエ』(本店・渋谷区千駄ヶ谷1-28-1 B1 TEL:03-3479-8965)は世界の紅茶を200種以上扱う紅茶専門店。本店にはティーサロンも併設。飲み方は英国式ではなくフランス式(ルールなし・ミルクなし)です。

世界3位の紅茶メーカー『ブルックボンドハウス』が行っている、紅茶教室(中央区銀座1-3-1 TEL:03-3535-1105)。通常の基礎のコース(5750円)では、1.歴史・文化 2.産地 3.淹れ方の実習 4.パーティーの開き方の全4回を毎週1回ずつ学びます。

フォーシーズンホテル(文京区関口2-10-8 TEL:03-3943-0920)のロビーラウンジ『ル・ダルジャン』では、93年の開業時からスコーンやサンドイッチも付く英国式の本格的なアフタヌーン・ティー(14:00〜17:00、2500円)を提供。

更新日2004年5月30日
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