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 あんみつ・汁粉・くず餅などの純和風甘味(スイーツ)をイートインで食べさせる、いわゆる『甘味処(かんみどころ)』は、近年、洋菓子店に人気を奪われがちな上、ダイエット・ブームによる女性の餡子(あんこ)離れのおかげで、減少の一途を辿ってきました。和物の甘味は洋菓子より原価が高く、利益率が低いことも要因の一つのようです。

小平一雅  ところが最近、そんな甘味処に、思わぬ方向からスポットが当たり始めました。一つは浴衣ブームに代表される女性の和風回帰の方向から。そしてもう一つは、和風の甘味は意外とカロリーが低く健康食だという、みのもんたの『おもいっきりテレビ』的事実から。
 どうです?貴女(マダム)も、久し振りに甘味処に足を運んでみてはいかがですか?
味処のメニューは、あんみつ、みつ豆、くず餅、ところ天、これに夏にはかき氷と白玉、冬は汁粉粟ぜんざいが加わるのが、ほぼ相場--こういうメニューって、実は凄いヘルシー食品だって、知ってました?たとえば、あんみつ・みつ豆・ところ天の主成分である寒天は、海藻から作られる自然食品なため、食物繊維はたっぷりだわ、カロリーはゼロだわ、血中脂肪は下げてくれるわ、身体にいいことずくめ。くず餅にたっぷりかかっている黄粉(きなこ)も、コレストロールを下げ、ダイエットに効果があると言われています。しかもこれらの和風甘味は、右の表(表1)の通り、洋菓子に比べるとかなりの低カロリー。さあ、どうです?貴女も少しは純和風甘味を見直す気になりました?

ともと甘味処のルーツは、江戸時代の団子屋。ホラ、水戸黄門ご一行が旅の途中でよく休憩しているあの店。そうした団子屋は、どこも自前の餡(あん)を練っており(小豆をどれくらい水にさらすかで、色が変わったりするので、通は餡の色をみただけで、それがどこの店のかわかるのだそうです)、やがて、同じ餡を扱うことから、汁粉・粟ぜんざい・神在餅(じざいもち=餅を餡や黄粉で食べる菓子)を出すようになり、徐々にメニューを増やしてゆきます。

1 903年(明治36年)、浅草の羊羹店・舟和は、それまでしん粉(しんこ=白米をひいて粉にして固めた菓子の材料)にえんどう豆を入れ蜜をかけて食べる子ども向けの駄菓子だった「みつ豆」を、モダンな銀食器に盛り、寒天・煮杏・牛皮・赤えんどう豆等を入れ、大人が楽しめるおやつにバージョン・アップ。これが当たって、みつ豆は東京じゅうに広がってゆきます。
 それから27年経った、1930年(昭和5年)、今度は銀座の老舗の汁粉屋・若松の二代目・森半次郎が、このみつ豆の上に餡子をのせた、よりゴージャスな「あんみつ」を考案。これが、銀座の街でブイブイ言わせていた松竹歌劇団や宝塚の女のコたち、あるいは花柳界のお姐さん方に人気を呼び、あんみつは新しい東京の味としてもてはやされます。そして、森半次郎がそのレシピを、同じ銀座の立田野(小倉アイスを考案した店といわれています)や、神田須田町の竹むらなどに伝授したおかげで、あんみつは、みつ豆を上回る人気メニューに成長します。
 このように、甘味処は、東京の庶民の生活の中から成長していったもの。貴族の茶事につきものの上生菓子作りから成長した、貴族相手の京都の和菓子店とは、およそ対照的な存在と言えます。例えば京都のくず切りの「くず」は、植物の「葛」の根から作った葛粉を固めた高級な素材を指すのに対し、関東のくず餅の「くず」は文字通りでんぷんを精製したときに出るクズから作られる白濁した安い素材。同じくずでも、貴族文化の京都と、町人文化の東京では、これほど違うものなのです。

後、銀座の『若松』が関西に支店を出した際、あんみつの寒天が臭いという苦情が殺到したことがあるそうです。銀座の味をそのまま持って行ったはずなのに、とショックを受けた『若松』が詳しく調べたところ、東京人は古来から伊豆七島で採れるてんぐさを煮出して作った海藻の匂いの残る生の寒天を食べていたのに対し、関西では、てんぐさがあまり採れないため、関東の寒天を運搬の途中、長野で一度干して棒状にした、いわゆる棒寒天を使っていました。この棒寒天がほとんど無味無臭だったため、関西人は寒天の匂いに弱かったのです(いかにも『美味しんぼ』のエピソードにありそうな話っスね)。

味処の主要メニューの一つ、ところ天にしても、関東では、寒天に酢醤油・辛子・海苔などをかけて食べるのに対し、関西では、蜜をかけて食べます。こうした違いができたのも、関東の生寒天は、酢醤油の味を受けとめる深い味があるのに対し、関西の寒天は味がないから。
 こうした食文化の違いを知ると、東京の甘味を味わう愉しみも増えそうというもの。下に、東京の代表的な甘味処の一覧表(表2)を示しましたので、ご参照ください(最近のお客様は甘味につきもののお茶にもこだわるようになったため、各店とも、お茶にも凝っているようです)。これらの中には、江戸時代からつづく老舗もちらほら。東京に住む者として、こうした店に一度も行ったことがないというのは、もったいない限り。貴女も一度は行っておくべきかと存じます。

(表2)東京の代表的な甘味処の一覧表
店名 場所 創業年 Tel お茶は何をだしているか
初 音 日本橋 1837年 3666・3082  狭山茶
梅 園 浅 草 1854年 3841・7580  夏は冷茶、冬は煎茶
立田野 銀 座 1895年 3571・1400  煎茶
若 松 銀 座 1894年 3571・1672  玉露&粉茶のブレンド
舟 和 浅 草 1903年 3842・2781  宇治の入った煎茶
みつばち 湯 島 1909年 3831・3083  夏は冷茶、冬は煎茶
芋 甚 根 津 1914年 3821・5530  夏はお冷や、冬は粉茶
竹むら 神 田 1930年 3251・2328  桜湯(桜塩漬けと白湯)
(表1)
アップルパイ(ウェスト) 478kcal
チョコレート・パフェ(DESSERT ISLAND) 474kcal
バニラ・スフレ(六盛茶庭) 428kcal
栗ぜんざい(三原堂) 414kcal
バナナチョコ・クレープ(クレープハウス・ユニ) 403kcal
ミルフィーユ(ボンサンク) 363kcal
ショートケーキ(千疋屋) 349kcal
モンブラン(不二家) 344kcal
ハーゲンダッツ・アイス/クッキー&クリーム 295kcal
あんみつ(みつばち) 282kcal
チーズケーキ(イタリアントマト) 257kcal
みつ豆(舟和) 235kcal
くずもち(舟和) 227kcal
抹茶アイスクリーム(資生堂パーラー) 164kcal
女子栄養大学出版部『お菓子のミニガイド』より

浅草・舟和』芋ようかんで有名な浅草・舟和は、みつ豆を初めてイートインで食べさせた店。ここで使われている寒天は、比較的海藻の匂いが少ない糸寒天だそうです。

若松』銀座5丁目、ニッサン・シュールーム隣のコア・ビルの1階、若松は、あんみつを発明した店として有名。明治27年からこの地で汁粉屋として営業しており、典型的な東京の甘味処。元々あんみつは、餡の味がくどいので、みつはさっぱりしていた方がいいだろうということで、10年前まではあらかじめ白みつをかけて出していたそうですが、今は客が白みつ黒みつをチョイスできます。ちなみに、若松の餡子は、相当色が黒い方です。

竹むら』池波正太郎も贔屓にした神田須田町『竹むら』は、戦災を免れ、今も昭和5年の創業時の外観を保っています。

くず餅』くず餅は小麦でん粉を発酵させて作られる、低カロリー・天然素材の健康食品・歯切れのいい食感が命です。

更新日2004年5月16日
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