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 上海市民は朝食と昼食は家で作るということをしません。ワンブロック歩けば安い屋台が並んでいるので、そこで肉まんや焼売などの小吃(シャオチー=中国版ファストフード)を買って手軽に済ませます。
 そしてその上海生まれの代表的な小吃が小籠包。東京でも2003年は小籠包が静かなブーム。2003年4月に六本木ヒルズ内に誕生した小籠包専門店の『南翔饅頭店』では、ゴールデンウィークに4時間半待ちという記録を立てました。

小平一雅  小籠包のいいところは、中のスープを、豚だけでなくさまざまな味に仕立てられること。この季節、芝大門の老舗の『新亜飯店』では、6個3500円という超高級な上海蟹スープ入り小籠包を食べることもできます。
 今回は、上海の熱々の味、小籠包のお話をいたしましょう。
国の北部には、昔から農作業で忙しかった女性たちが、食事を簡単に済ますため、小麦粉の皮で肉や野菜を包んでおいて、それを必要に応じてせいろで蒸して温めて食べる、小吃(シャオチー)というファストフードがありました。
 このファストフードを南の広東に伝えたのは、北の戦乱を避けて南に逃げた漢民族の子孫、客家(ハッカ=広東語で「よそ者」の意)。ただし、南では小麦より米の方が豊富だったため、皮は小麦粉ではなく米粉を使うようになり、そのため小吃は南に行くほど皮の薄い繊細なものになります。そして、小吃をキチンとした料理店が作ったものが、点心。点心が香港で英国式のお茶の文化と結びついたのが、飲茶。香港の飲茶店で出される皮が薄いエビ蒸し餃子やエビ焼売は、いずれも南の広東地方特有の点心。それに対し、皮がぶ厚い水餃子は、北の北京特有の点心。そして、北京と香港の中間点に位置する上海で生まれた小吃が、今回のお話の主役、小籠包です。

籠包は、黄明賢というヒトが1871年に上海郊外の南翔(ナイヤン)で開いた『南翔大饅頭』という店が起源(案外新しいものなんですね)。彼は、店の肉まんを近くの古猗園という繁華街に運んで売っていましたが、厳しい販売競争にうち勝つために、肉まんに何度も改良を加え、やがて今の小籠包に到達します。

籠包は、包丁で叩いて作った豚肉のミンチに、水の中でネギとショウガを丁寧に揉んで汁を出した葱姜水(ソンジャンスイ)を加え、さらに、豚皮を水で5〜6時間煮込んで冷やした煮こごり(ゼラチン)を練り込んで団子状に丸め、この団子を小麦粉の皮で包み、高温で蒸したもの。こうすると中の肉団子が適度に加熱され、その過程で煮こごりは溶けてスープ状となり、皮の中いっぱいに広がります。これをまるごと口に入れ、肉団子とスープを同時に楽しむのが小籠包の醍醐味。
 ちなみに、小籠包の皮は肉まんと同じ原料。小麦粉をそのまま伸ばしたのが小籠包の皮で、それをパン生地のように一回発酵させたのが肉まんの皮というわけです。

の小籠包が東京で広まったのは、ここ10年のこと。
 たとえば、周恩来元中国首相(上海地方の出身)も東京留学時に通ったという、神田で1911年からつづく上海料理の老舗『漢陽楼』では、昔から中国人留学生の宴会があったり、前もって注文があったときには小籠包を出していたそうですが、日本人はまったく知らなかったので、メニューには載せていなかったとの由。
 小籠包を初めて日本人向けメニューに載せたのは、芝大門で1974年から営業している『新亜飯店』でしょう。東京の遊び人の多くはこの店で小籠包という食べ物を知ったと言います。

の後、1980年代の飲茶ブームに乗って小籠包は東京中に普及。が、本場の小籠包が今のように一般的になったのは、台湾(客家は、台湾にも渡っています)の鼎泰豊(ディンタイフォン)が1995年に新宿高島屋タイムズスクエアに進出してから。ニューヨークタイムスが世界10大レストランの一つに選んだというこの店の小籠包は、皮の薄さが画期的。その分スープの量が多く、「小籠包って、こんなにスープがたっぷり入ってるものなの?」と感動された方も多いのでは。また、小籠包は作り置きすると皮が破れてスープが流出しやすくなってしまうため、作りたてをすぐに蒸して出すことが重要で、そのため中国では店頭で作っている様子を見せるのが一般的ですが、そのスタイルを東京に持ち込んだのも鼎泰豊が最初です。

だし、鼎泰豊の小籠包は餡が小さいので、肉の旨味が薄く、食べ応えがないのが難点(小籠包以外の麺類や炒飯がイマイチという欠点もあります)。
 一方、上海から2003年4月に六本木ヒルズに初上陸した南翔饅頭店は麺も炒飯も出さない小籠包だけの専門店。餡が大きく、皮も噛み応えがあって男性的な感じ。行列の長いのが難でしたが、最近は、蒸し器の性能をアップして短時間で蒸せるようにしたため、行列も多少は短くなりました。
 2003年11月30日には、横浜中華街の入口に、8階階建てのビル全体で上海を再現した『横浜大世界』も誕生しました。ひとつこの冬は、貴方も小籠包の食べ較べをされてみてはいかがでしょう?


 小籠包が食べられる主なお店
東京一長い行列が出来る飲食店『南翔饅頭店』(TEL:03-5413-9581 六本木ヒルズ内)は、創業100年の歴史を持つ、上海の観光地『豫園』の小籠包専門店の海外初出店。日本での経営元はソーホーズ。トゥナイト2でお馴染み、元マガジンハウスの石川次郎氏が、ソーホーズの月川蘇豊氏を連れて行ったのが出店のキッカケとか。

靖国通りから1本入った裏通りにお店を構える『漢陽楼』(TEL:03-3291-291 千代田区神田小川町3-14-2)の小籠包は、初めから上に千切りのショウガがのっていますが、中の餡やスープにしっかり味がついているので、タレをつけずに食べるのが特徴です。

芝大門通りに面した『新亜飯店』(TEL:03-3434-0005 港区芝大門2-3-2)は、小籠包を30年前からメニューに載せていた老舗。カジュアルな造りの1Fでは、小籠包だけを注文するお客さんも多数。老舗の迫力か、餡も皮もどこの店よりもビッグサイズです。

『鼎泰豊』は台北に本店を構える点心の店。日本には新宿・二子玉川・汐留・横浜・名古屋・京都・熊本と7店舗あります。イラストは2003年9月にオープンした玉川高島屋南館店(TEL:03-5797-3273 世田谷区玉川3−17−1 9F)。高さは9Fですが、かなりの夜景です。

2003年11月30日、横浜中華街にオープンした『横浜大世界』(TEL:045-681-5588 横浜市中区山下町97)

更新日2003年12月21日
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