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 日本の秋の味覚の代表マツタケは、1950年代までは国内でコンスタントに年間7000トン採れていたのが、2000年には年間181トンと、40分の1に減少。代わって、今日、国内消費を支えているのが、1976年から始まった海外産マツタケの輸入です。マツタケは、世界中の温帯地域で採れるわりに、スウェーデンでは「むかつくキシメジ」と呼ばれ、中国ではその香りが「兵隊の靴下の臭い」と言われ、評判は散々。

小平一雅  おいしいと思って食べているのは日本人と鹿だけ。輸送技術の進歩とあいまって、中国、北朝鮮、韓国、トルコ、モロッコ、メキシコ、カナダと、世界中のマツタケが日本に持ち込まれるようになりました。今回は、世界の秋が日本に集まるマツタケのお話をいたしましょう。
ツタケは、枯れ木に生えるシイタケや、落ち葉に生えるマッシュルーム等と異なり、生きたアカマツの根から養分を吸収して成長するため、生きたアカマツ林にしか生えません。しかもマツタケ菌は生命力が極端に弱く、他の微生物との生存競争にすぐに負けてしまうため、同じアカマツの根もとでも、下草刈りをして落葉もとり除いた栄養分の乏しい地面でないと、生えません。
 その発生のメカニズムは未だ完全には解明されておらず、従ってマツタケは人工栽培が不可能。数年前、広島で人工マツタケが作られ、東京の市場でも売られたことがありましたが、DNA鑑定したところ、マツタケよりもシイタケに近く、香りも味も数段落ちたため、すぐに消えてしまいました。

本国内では、アカマツ林の減少(ことに西日本の集団枯れがひどかったそうです)に伴い、マツタケの生産量が過去40年間で40分の1にまで減ってしまっており、今やマツタケは輸入が命。東京の大田青果市場の取扱い量の98%までが輸入モノ(表参照)。さらに言えば、その70%までが中国・北朝鮮産だそうです。

鮮半島とその北側に接する中国吉林省のマツタケは、日本と同じアカマツの根もとにできるもので、現地で採れたてを食べれば、風味は日本産とほとんどと変わりません(ダグラスモミの根もとにできるカナダ産や、レバノンスギの根もとにできるモロッコ産は、風味が微妙に違うそうです)。それが、日本に運ばれると、国産モノより風味が落ちると言われるのは、共産圏からの輸入ゆえ、検疫に4日もかかるから。マツタケはトリュフ以上に香りが落ちるのが早く、4日も経つと香りがどんどん飛んでしまう上、脚の方から黒ずみ始めてしまうのだそうです(貰いもののマツタケがあったら、すぐ食べるに限ります)
 それに較べて資本主義国・韓国のマツタケは検疫が短くてすむため、風味が一段上。値段も中国・北朝鮮産の倍近くします。2000年前のJAS法改正以後は、店頭での原産国表示が義務づけられているので、この秋はスーパーで産地に注目してみてください。

ころでマツタケの消費量は、関東よりも関西の方が断然上。そして、関東では傘が開いていない脚の色の白い見栄えのいいマツタケが好まれるのに対し、関西では、傘がすっかり開いた、香りのよく出ているものが好まれます(見かけ重視の関東、味重視の関西と言えます)。そのため、傘の開ききったマツタケはほとんどが大阪に持ち込まれ、東京ではあまり見ることがありません。

本国内でマツタケの生産量が一番多いのは広島。これにつづくのが岩手、長野、岡山。風味の点で最高級とされるのが京都・丹波産。ただし、東京では産地からの距離の関係で、圧倒的に多いのが岩手と長野産です。

雨どき、季節を間違えて生えてくるマツタケを早松(さまつ)と言い、それが市場に出回るのが6月。と同時に、中国・北朝鮮産の輸入モノが出始め、7月にはメキシコ産、8月にカナダ産、9月に入ると、岩手産を筆頭に北から国産の本松(季節を間違えていない旬のマツタケ)が出始め、9月下旬に真打ちの丹波産が登場、さらに10月上旬に広島産、最後にモロッコ産と産地が移ってゆきます(半年間食べられるわけです)
 基本的に、雨の多い年のマツタケは豊作と言われ、夏に長雨がつづいた2003年の国産マツタケは比較的豊作だそうで、逆に夏が暑過ぎた2002年は不作だったそうです。

産マツタケの値段は年によって、大きく異なりますが、通常はキロ当たり2〜3万円に落ち着くのが通例。別格は、京都・丹波産で、1960年当時はキロあたり600円前後(今の物価で言うと6000円前後)だったのが、不作の2002年は、キロあたり25万円以上していたそうです。
 それに対し、輸入モノは毎年5000円〜8000円。従って、料理店が輸入マツタケを使うのはやむを得ないこと。良心的な店は、輸入モノに国産を混ぜ、価格を抑えながら、香りを出していますが、ひどい店は、安い輸入物に八百屋で数百円で売られている液状の「マツタケの香り」をふりかけてごまかしているとか(実際、そういう店が圧倒的に多いようです)。そんな中、本物の上質の国産マツタケだけを出している店をイラストでご紹介しますので、違いを確かめるためにぜひお運びください。
 マツタケの食べ方にも色々ありますが、上質の国産モノなら、シンプルな焼きマツタケにすだちを絞るのがいちばん。いい料理店では焼きマツタケをお奨めします。

『懐石・小室』(TEL:3235-3332新宿区若宮町13)は、神楽坂の坂をのぼり、毘沙門天を左手に入った裏路地にあるカウンター8席と個室が一つだけの懐石料理店。オープンは2000年5月と比較的新しい店ですが、麻布・幸村と並ぶ、今東京で最も勢いのあるカウンター懐石料理店。毎年、使っているマツタケは丹波産。入らなければ長野産を使用。器のよさにも定評があり、日本酒の冷酒でもグラスはバカラ。夜のコースは12000円、16000円、おまかせ22000円の3つ。アラカルトはなし。

『なべ家』(TEL:3941-2868豊島区南大塚1-51-14)は、鍋だけにこだわらず、四季折々の江戸前和食を出す、個室だけの超高級料理店。9月は松茸と落ち鮎のコースが16000円。長野産の松茸が、焼き浸し、松茸茶付けなどで供されます

『京味』(TEL:3591-3344東京都港区新橋3-3-5)の『秋バモと松茸の鍋仕立て』は、地上の3大美味の一つにあげるヒトも。マツタケは丹波産のみ使用。コースがおまかせ35000円とお値段が超上級なのが玉にキズ。天王洲に支店あり
焼き松茸は、包丁をわずかに入れたら、あとは指で割くのが一番。焼くのは表皮のある側だけ。全体の90%が水分なので、焼き過ぎには要注意。白い方を上にして、表面がジワッと汗をかいた状態になったら、焼き上がりです。

更新日2003年9月28日
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