トップ 今週のエンターテインメント 来週のエンターテインメント 東京コンシェルジュブログ フラウ東京コンシェルジュ
ホイチョイプロダクションズの東京コンシェルジュ
 スッポン鍋は、フグ鍋、アンコウ鍋等と並んで、日本の冬の味覚を代表する鍋料理。そのわりに、いまいちポピュラーでないのは、高い価格とグロテスクな外見のせい。何たってスッポンは爬虫類。切れば赤い血が出ますし、生きたままさばくので暴れもします。誰もが食べられるというものではなく、これまで、限られた食通のものでした。

小平一雅 しかも、その食通が不況で会社の交際費を使えなくなってしまったため、スッポン料理店は大打撃を受けています。
 が、スッポンは、コラーゲンに富んだ最強の美容食。銀座のお姐さんはスッポンを食べた翌日はお化粧のノリが違うと言いますし、かの叶姉妹も、六本木『とみ綱』で毎週のように食べていると言います。この際、スッポンを社用族のオヤジの手から解放しようではありませんか。
とスッポンの言葉の通り、日本では昔からスッポンはダメなものの代表とみなされてきました。が、実は食材としては、庶民には手が届かない超高級品。フグは最近安い店がたくさん出来ているのに、スッポンは値段が一向に下がらず、安い店でも一人1万円超。東京の店ガイドの代表、ザガット・サーベイにも、フグの専門店はたくさん載っていても、スッポン専門店は一切載っていません。それだけスッポンはエクスクルーシヴな料理と言えます。

ッポンの英語名はソフト・シェルド・タートル。つまり「甲らの柔らかいカメ」。確かにスッポンの甲らは普通のカメよりも柔らかく、ことに甲らの縁のえんぺらは、コラーゲンの塊まり。見た目はグロテスクですが、食べるとゼラチンが舌にまとわりつくような感じ。他の部位も、プリプリした独特の食感をしています。
 栄養学的に見ると、スッポンは良質のたんぱく質やアミノ酸、ビタミンに富み、美容にいいばかりでなく、新陳代謝を活発にし、疲労を回復。動脈硬化の改善にも優れた効果を発揮します(なんたって中国では漢方薬ですから)

本では、スッポンは甲らの形から丸と呼び、鍋は丸鍋、雑炊は丸雑炊と言います。この呼称は元々は関西からきたもので、ルーツは、京都で350年つづく大市。志賀直哉の暗夜行路にも、美味しんぼの究極のスッポン料理の回にも登場するこの店は、表の柱に応仁の乱でできた刀傷が残っているというほどの老舗で、日本のスッポンの味のスタンダードを確立したのも、天然物のスッポンの激減に対応するために浜名湖でスッポンの養殖を始めたのも、この店だと言われています。

市のスッポン料理は、丸鍋と余ったスープで作る丸雑炊の2点のみ。丸鍋は、野菜も何も入れない純粋にスッポンだけの鍋。丸雑炊も、卵も浅葱も入れないスープと米だけのシンプルなもの。使われる鍋は、数十年間使い込んで、味がすみずみまで染み込た分厚い信楽焼きの土鍋。大市では、その土鍋をコークスで底が真っ赤になるまで熱した上で、肉とスープを入れて煮立てます(金属の鍋と土鍋では、味のまろやかさがまったく違うそうです)。
その、五臓六腑に染み渡るような濃厚な味の秘密は、何と言ってもスッポン・スープ。スープは、解体したスッポンをたっぷりの酒と水とわずかな醤油で煮込み、ゼラチンを十分に溶け出させた上で漉して、ストックしておいたもの。これとは別に、ぶつ切りにしたスッポンの肉を下煮してアクをとり、それをストックしたスープと一緒に土鍋で煮て、最後にショウガの絞り汁をたっぷり加える。これが丸鍋の味作りの基本。

うした、大市に代表されるシンプルな丸鍋は、東京では、第二次大戦前に大市の息子が開いた赤坂のさくま(イラスト参照)で賞味することができます。 一方、東京のスッポン料理店は、丸鍋・丸雑炊以外にも、刺身、唐揚げ、にこごり、茶碗蒸し等々、いろいろな調理法で出すのが一般的。ことに、刺身・唐揚げは、言語に絶する旨さ。こちらは、銀座の唐井筒、六本木のとみ綱(いずれもイラスト参照)等でどうぞ。

ころで変温動物のスッポンは、水温が15℃を下回ると冬眠に入ります。その冬眠に備えて大量にエサを摂る晩秋は、スッポンが一番脂が乗っておいしい季節。スッポンは,言ってみればジビエの一種なんですね。
 先に触れた通り、今日、天然物のスッポンはなかなか手に入らないため、どんな高級店でも養殖物を使っています。養殖物のスッポンには二通りあって、一つは、自然と同じ水温の戸外の養殖池で、毎年きちんと冬眠をさせながら育てた天然仕立て。これだと、食用に供されるまで最低3年以上かかります。これに対し、最近は、暖房したハウスの中で、工場排水や温泉を使って常に水を15℃以上に保ち、冬眠させることなく、配合飼料をガバガバ食べさせて短期促成させたスッポンも、出回っています。これだと、2年で食べられるようになります。

然仕立てのスッポンに較べ、短期促成のスッポンは肉の締まりが悪く、脂っぽい匂いが鼻につくと言います。高級店が「うちは4?5年物しか出しません」と言うのは、「天然仕立てしか出しません」という意味です。
 最近はインド産の格安のスッポンも輸入されているようですが、血とかを生のまま飲むことを考えると、右表に掲示した一流店でそれなりの金を払って、衛生的な環境で養殖された国産物を食べた方が無難かもしれません。



業態 店名 電話 場所 創業 コースの値段
すっぽん料理店 喰切り 江ぐち 3796-4445 神宮前 2000年 10000円〜
唐井筒 3571-0755 銀座7丁目 1991年 1匹(3人前)18000円
とみ綱 3408-1215 六本木 1975年 15000円
さくま 3584-6891 赤坂 1967年 20000円
亜羅亀 5567-0151 巣鴨 1972年 5000円
ふぐ・すっぽん専門店 浅草福治 3567-1608 銀座3丁目 1976年 8000円
さくら田 3585-4402 麻布十番 1971年 1匹(3人前)13000円〜
長谷 3375-6208 新宿 1988年 1匹(3人前)12000円
良支 3461-1528 渋谷 1957年 25000円
辻むら 3872-4640 浅草 1977年 1匹(3人前)13000円
すっぽんも出す割烹料理店 天竜 3467-8628 代々木上原 1985年 1匹(3人前)13000円
三浦屋 3949-0414 大塚 1968年 1匹(3人前)19500円
橙橙 3485-5151 下北沢 1980年 4000円〜
スッポンは、まず首を落として生き血を採り、これを焼酎で割って、グラスでぐいっ。意外とクセがなく、あっさり飲めてしまいます。続いて、肩の肉と腸は湯で洗って刺身に、脚の周りは唐揚げに、その他の部位は、すべて鍋の中。鍋のスッポン肉は、骨や関節にまとわりついていて、フグちりのようですが、一度口に入れれば、骨や関節から肉がきれいにほろりとはがれ、フグより簡単食べられます。見た目はグロテスクですが、味は鶏に似て、さっぱり。1匹でだいたい三人がお腹一杯になります。

大市(だいいち・京都市上京区 TEL 075-461-1775)は、日本のスッポンを語る上で欠かせない銘店。丸鍋と丸雑炊の他は、突き出しとして佃煮を出すのみ。何十年と味が染み込んだ土鍋の威力は、美味しんぼで紹介され、有名に。

銀座7丁目、資生堂本社前の『唐井筒』は、スッポンの刺身を東京中に広めた銘店。鍋は、身を食べた後で、笹がきゴボウとネギを入れて供し、残ったスープを雑炊に。スッポンは島原産の3〜4年もの。

さくまは、赤坂の虎屋の裏路地にある、個室6室のみの一軒家のすっぽん料理専門店。昭和の初めに大市の長男が新橋・田村町に出店、30年ほど前に赤坂に移転してきました。料理は基本的には大市スタイル。

叶姉妹が通った六本木のすっぽん専門店『富綱』は、2001年冬、『とみ綱』と屋号を変え、すっぽん以外の季節料理も出す店にリニューアル。但し、経営は変わらず、こだわりの丸鍋も、気の利いた内装も昔のままです。

神宮前の『江ぐち』は、2000年3月にオープンした最新のすっぽん料理専門店。丸鍋は、ザクは一切加えず、赤々と熱せられた鍋でギュッと旨味を抽出。絶品。

更新日2002年12月22日
森ビル 免責事項 J-wave