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 東京では、パスタ・ラーメン・蕎麦は、一度はブームになっていますが、うどんだけは未だにブームを迎えていない唯一の麺類。
 茹でたてのうどんは、表面は熱くても、芯までは熱が通りきっておらず、噛み切ると中心に硬い部分がかすかに残った、まさにパスタのアルデンテ状態のはず。ところが、そば文化圏の東京では、うどんはそば屋のサブメニュー扱い。多くの店が、朝一番でまとめて茹でてとっておくので、放っておかれるうちに芯まで同じ温度になってしまい、のびた状態で供される場合がほとんどでした。

小平一雅  が、ここに来て東京にも、うどんをアルデンテで出す讃岐うどん専門店、それもセルフ・サービスの店が続々誕生しています。東京にもいよいよ、初のうどんブームが訪れたようです。
岐(=香川)は、水田が作りにくい地形だったため、昔から米よりも小麦作りの方が盛んだった土地柄。さらに、塩も「讃岐三白」という「讃岐名産3大白いモノ」の一つに挙げられているほど生産が盛ん(ちなみに、ほかの二つは和三盆糖と綿です)。その小麦粉と塩を大量に使い、足で踏む強い加圧と熟成を繰り返す独特の製法で作られた、太くてコシの強いうどんは、讃岐最大の名産品。讃岐では、江戸の街にうどん屋が出現するよりも前の17世紀後半から、金比羅宮前にうどん屋が軒を並べていたと言います。

っとも、今の香川では、うどん作りに地粉を使っている店は少なく、9割がオーストラリアン・スタンダード・ホワイト(通称ASW)という豪州産の色の白い中力粉を使用。というのも、実はこの粉、うどん専用に開発された品種。讃岐うどんのツルツルシコシコの食感は、ASW主体の小麦粉の使用によって生まれると言っても過言ではありません。
 讃岐うどんに使われる小麦粉の代表的なブランドは、日清製粉の特雀・金魚・きんすずらん、日讃製粉の緑あひる。さらに、日清製粉のような全国規模の製粉メーカーは、同じ銘柄でも、香川県にだけは、「香マーク」と呼ばれる、よりグレードの高い粉を卸しています。それだけ香川のヒトたちは、粉にうるさいというわけです。

ころで、讃岐うどんのもう一つの特徴がダシの味。
関東のダシの基本が濃い口醤油、大阪が鰹節と昆布だとすれば、讃岐のダシの基本はいりこ(小魚を炒って干したもの)。香川県の瀬戸内海沖にある伊吹島は、日本一良質ないりこの産地。そして、この日本一のいりこを大量に使ったのが、讃岐うどんのダシ。讃岐のヒトは、いりこの腹わたから出るナマ臭さと渋味をことのほか好み、それが讃岐うどんの大きな特徴になっています(讃岐うどんが、ショウガをよく使うのは、ナマ臭さを少しでも消すためです)。

岐では、古くから庶民の食文化の中心にうどんが定着してきただけに、うどんの食べ方のバリエが豊富。基本は、「かけ」「ざる」「ぶっかけ」の3つ。
「かけ」は関東と同じ普通のかけ。「ざる」も同様。「ぶっかけ」は、「かけ」よりも、かかっているダシ汁の味が濃い目で、量が少な目。さらに、「ぶっかけ」には、香川の『宮武』という人気店の「あつあつ」「ひやひや」「ひやあつ」「あつひや」と呼ぶ独自のスタイル(麺とだしの温度を表し、「ひやあつ」なら「冷たい麺に熱いだし」を意味します)が、東京でも広く定着しています。
また、普通の讃岐うどんは釜で茹でた後で、一度水で洗ってぬめりを取ってから(「水でしめる」と言います)供されますが、釜から上げたら、水でしめずにそのまま茹で汁と一緒に桶に入れて出すのが、「釜あげ」(通の食べ方と言われます)。汁抜きの麺に生じょうゆをかけて食べるのが「しょうゆ」。氷の浮かんだ冷水と氷につけて、そうめんのように出すのが「冷やし」。以上6通りの食べ方が、普及しています。

た、讃岐うどんの世界では、近年、「大衆セルフ」と呼ばれる、立ち食いそば的廉価店が増殖中。本場香川のセルフ店は、自分でダシや薬味をかけるだけでなく、麺自体も、金や竹の網に入れて好みの温度になるまで自分で湯がくシステムですが、最近東京に誕生しているセルフ店は、客がそこまでは慣れてはいないので、どこも、自分で薬味や具を取る程度。赤坂・神田の『ふるさと』、築地市場前の『うどん屋大将』などが、そうしたセミ・セルフの代表格。さらに8月末には、本場香川のセミ・セルフ『はなまるうどん』が渋谷公園通りに、かけうどん100円という安さをウリにオープン。JR四国が経営するその名も『さぬきうどん』が恵比寿駅構内にオープン。両店とも連日行列ができる人気ぶりで、東京の讃岐うどんブームの中核となっています。

うしたセルフ店とは別に、讃岐で修業を積んだ本格派の職人さんによる一般店は以前から定着しており、たとえば北十条の『すみた』、銀座『さか田』、神田『野らぼー』、川崎の『綾』などがその代表。『綾』や『すみた』などは、週末になると開店と同時に行列ができ、閉店時間を待たずして売り切れ仕舞いしてしまうという過熱ぶり。

い夏でも、「ざる」や「冷やし」や「ひえひえ」で楽しめる讃岐うどん。「職人系」を訪れるもよし、「セルフ店」にさくっと立ち寄るもよし。いずれにせよ、うどんを前にしたら、間違ってもココに書いてある講釈などは垂れず、伸びないうちにさっさと召し上がってください。

2002年2月に開店した『ふるさと』(港区赤坂2-20-11一哲ビル・5545-1201)は、麺やいりこや天ぷら等の食材をすべて讃岐から運んでいるという本格派。どんぶりを受け取って「薬味を盛る」「サイドオーダーを取る」「片づける」という部分のみがセルフサービスのセミセルフ店ながら、本場気分はそれなりに味わえます。通の間での味の評価はイマイチですが、かけうどん 180円は、“讃岐の味を讃岐の価格で”というキャッチフレーズ通りのプライス。同年7月には、内神田に2軒目もオープンしました。

都内No.1の呼び声が高いのが十条の『すみた』。ご主人は香川の『源内』で2年修業した後、99年7月にこの店をオープン。人気店ゆえ、玉切れで早じまいという日も。夜の営業は18時スタート。2名以上で19時までに入店できる場合のみ予約可。

曙橋近くの『こびんちょ』は、外苑東通りに面していて車を停めやすいのと、営業時間が23時までと長いのが取り柄。居酒屋風の店内には打ち場と大きな茹で釜があり、本格ムードを漂わせています。店名は讃岐の昔の言葉で「子供」の意味。

井の頭線東松原駅前の『四国路』は、香川のとなり、徳島の名物たらいうどんの専門店。厳密には讃岐うどんではないが、だしは他のどこにも負けないほど「いりこ」がきいた讃岐風。うどん専門店の中では、店の作りはかなりきれいな方です。



「讃岐うどん基本6種」


店名都内店鋪電話創業料金
ふるさと赤坂・神田5545-1201(赤阪店)02年 かけ180円
まんまるはなまるうどん渋谷5428-087002年 かけ100円
ぶっかけ280円
さぬきうどん恵比寿駅構内3716-419802年 かけ290円
ぶっかけ390円
こびんちょ荒木町5363-685800年 かけ180円
ぶっかけ700円
ザ・うどんや大将築地3544-282100年 かけ190円
ぶっかけ460円
すみた中十条3905-009999年 かけ450円
ぶっかけ650円 
さか田銀座3563-740096年かけ650円
ぶっかけ700円
さぬきのうどんや住吉町3350-968896年 かけ300円
ぶっかけ(おろし)380円
四国路松原3322-824682年 かけ650円
饂飩 四国池袋・田町・渋谷5391-8465(池袋店)68年 かけ600円
ぶっかけ(おろし)750円
更新日2002年9月22日
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