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 東京の山の手は昔農家が多かったせいで、神社の祭礼は秋に収穫祭として行われるケースが多いのですが、下町の祭礼はほとんどが夏祭り。5月10日の下谷神社に始まり、神田明神、浅草神社、鳥越神社、日枝神社、富岡八幡と、すべて8月までに完了してしまいます。

小平一雅  下町の祭りはどれも大がかりで、毎年開くと、金でもマンパワーでも地元の負担が大き過ぎるため、みこしの出る本祭りは2〜3年に一度というところが多いのですが、今年は、一番格式の高い神田明神を除けば、全部が本祭り。その神田も、愛子内親王誕生を記念して、今年に限って三越前から行列を行うそうです。
 浴衣も和食もブームですし、今年は一つ江戸情緒溢れる下町の夏祭りを満喫されてはいかがでしょう。お金もかかりませんしね。
川家康は江戸に幕府を開くに当たり、現在の大手町にあった平将門をまつる神田明神を、江戸城の鬼門に当たる北東の方角の湯島に移転し、江戸の総鎮守(守り神)に認定。神社だけでは鬼門の守りが不安なので、江戸城湯島の延長線上に寛永寺も建立。さらに、裏鬼門の南西の方角の溜池山王に日枝神社を設置、その延長線上に増上寺を作りました。
そのため、神田と山王の二つの神社の祭りは、みこしや山車が城内まで入ることが許され、天下祭りと呼ばれて規模が拡大。拡大のあまり、毎年開催すると金がかかり過ぎるようになり、交互の隔年開催と決められます。
その慣習は今もつづいており、どちらの神社も、祭礼の基本となる宗教行事は毎年行うものの、みこしの出る本祭りは、2年に一度。みこしの出ない年は陰祭りと呼ばれ、今年は山王の方が本祭りで、神田の方が陰祭りになります(祭りは地元の寄付金によって成立しており、毎年やると地元の負担が大きすぎるため、観光資源化している三社祭を除けば、下町の大きな祭りはたいてい隔年開催です)。

なみに、祭りのみこしには、神社が所有する本社みこしと、氏子の町会が所有する町みこしの二通りがあり、どこの祭りでも、本社みこしが町に出る本社御渡と、町みこしが神社に出向く宮入りが、最大の行事。ことに、神田と山王の本社みこしは車輪のついた山車の形をしていて、本社御渡は、時代衣裳を身につけた行列が山車を引っ張る型式。こうした行列が出るのもは、徳川家認定の天下祭りならではのことです。

、この二つが江戸の二大祭りであることには誰も文句のつけようがない事実なのですが、日本人は元来が『三大』好き。じゃあ、江戸三大祭りを選ぶってことになると、あとの一つは何かという問題になります。
この問題に昔から名乗りを挙げているのが、浅草の三社祭りと深川富岡八幡宮の深川祭りです。
神田・山王の祭りが武士の祭りとすれば、こちらは町人の祭り。喧嘩っ速い江戸の町人気質を反映してか、浅草と深川はことごとく対立しており、例えば、5月に行われる三社祭りでは、下に履く股引きは足首までの長いものが粋とされているのに対し、8月に行われる深川祭りでは、みこしの担ぎ手に水をかけまくるので、ボトムは膝までの短い半股引でなければなりません。かけ声も、浅草が「そいや」なのに対し、深川は頑なに「わっしょい」。みこしの担ぎ方も、三社祭りは、別名喧嘩みこしと呼ばれるほど荒々しく、激しく上下動させるのに対し、深川祭りは、木場で材木を運ぶ要領で腰を使い上下動を抑えるのがよいとされています。深川では、上下動の激しい担ぎ方は浅草担ぎと呼ばれ、これをやっているとみこしの下からつまみ出されてしまいます。

の二つに次ぐのが、千貫みこしと呼ばれる大みこしがウリの鳥越神社の祭りと、同じく通称お化けみこしと言われる大みこしがウリの下谷神社のお祭り。さらに、6代将軍家宣が寄進した由緒正しいみこしがウリの根津神社までが「三大祭りの残る一つ」レースに参戦しています。
ことに、鳥越神社は歴史が古く、東京で三本締めというと、テンポよく「ヨヨヨイヨヨヨイヨヨヨイ、ヨイ」と3回拍手するのが普通ですが、鳥越の手締めは1回ごとに「ヨーット」と合いの手を入れる独特のもの(鳥越で手締めをするときはタイミングに要注意)。

ころで、どこの祭りでも、本社みこしを担ぐのは神社認定の氏子の代表、町みこしを担ぐのは町会の青年部と決まっています。町会の青年部は一般に睦会と呼ばれ、睦の文字が背中に入った半天(ハッピと呼ぶとバカにされます)を着ています。この、地元町会青年部の半天が、その祭りの町みこしをかつぐための許可証。よそ者が自分の半天で勝手に担ぐことはできません。
但し、都心の人口空洞化が著しい最近は、地元の若者だけでは、数十の町みこしは担ぎきれないので、みこし担ぎを趣味にするグループ(たいていは、どこかの祭りの青年部)を呼んで、手伝って貰うのが常。そういう助っ人たちは、地元の睦会に何らかのコネを持ち、地元の半天を借りて担いでいます。貴方も、どこかの祭りで町みこしを担いでみたいと思ったら、お祭りの1ヶ月前に神社の周辺に足を運び、町に張り出されている担ぎ手募集のポスターを探してみてください。それはそれで、楽しい下町散歩になりますよ。


(三社祭り・宵宮)浅草の三社祭り前日(今年は5月17日金)の夕方から行われる「宵宮」。雷門に近い6ヶ町の町みこしが、浅草公会堂から六区の前を通り、仲見世を抜けて浅草神社の境内に入ります。古式にのっとらず、パレード的な要素が強く、ロウソク提灯や電気でライトアップされた6基のお御輿が行列をなして仲見世に入ってくるハイライトの時間は、19時頃。3日間で200万人という人出の多さが、三社祭りが東京三大祭りに名乗りを上げている由縁ですが、その中では宵宮が一番空いていてオススメです。

(祭り装束・めうがや)浅草・言問い通り沿いにある「めうがや」(台東区浅草2-27-12・3841-6440)」は、下町の祭り好きにはつとに知られた1867年創業のお祭り衣装の専門店。5代目の主人は足袋職人でもあるため、足袋のオーダーメイドも可能。

(山王祭り)日枝神社の山王祭りには、東京では珍しく山車が登場。山車の上の「美少年の像」は、道路事情にあわせて油圧式で上下可能。山車を引く動力も、昔は牛でしたが、今は魚河岸で魚を運ぶのに使うマイティーカーを宮司さんが運転しています。

(国立能楽堂)鳥越神社の祭りの名物は、本社みこしの「千貫みこし」。4トンという重さのみこしを200人が担ぎますが、一人がが5分と持たないので、実際には3倍以上の人数で入れ替わりたちかわり担ぎます(重いみこしはどこでもそうしています)。


都内の代表的なお祭り
神社名 場所 開催日 今年の本祭りの有無 本祭りの周期 氏子町会数 町会みこし数 問い合わせ
下谷神社 下谷 5/10〜12 2年 29カ町 40基 3831・1488
神田明神(神田祭り) お茶の水 5/12 × 2年 108カ町 200基 3254・0753
浅草神社(三社祭り) 浅草 5/17〜19 毎年 44カ町 100基 3844・1575
赤坂日枝神社(山王祭り) 溜池山王 6/7〜16 2年 72カ町 20基 3581・2471
鳥越神社 蔵前 6/8〜9 毎年 23カ町 60基 3851・5033
富岡神社(深川八幡祭り) 門前仲町 8/13〜18 3年 74カ町 50基 3642・1315
根津神社 根津 9/21〜23 2年 28カ町 50基 3822・0753
更新日2002年5月5日
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