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 北半球では、カキはRのつく月がおいしいと言われますが、9月10月はまだ早い。11月にやっと本来の味に戻り、身入りがよく、香りも立ってくるのは12月から。そして一番おいしいのは3月なんです。
NYで一番有名な店、1913年からグランド・セントラル駅地下で営業をつづける『オイスター・バー』も、本格的な賑わいを見せるのは12月から。

小平一雅  そのNYのスノッブの間では、数年前から、生ガキの食べ較べがブームですが、最近その流行が東京にも飛び火。3年前にニュージーランドのカキの輸入が解禁され、真夏も南半球のおいしいカキが食べられるようになったこともあって、カキ専門店が次々に生まれています。
 今回は、東京でちょっとしたブームのカキ専門店をご紹介しましょう。
リでは、レストランの軒先に出るカキ殻の山は真冬の風物詩。白いタイル張りのカキ専門店が、それぞれの地区に4〜5軒はあり、今時分になると、どの店にも大勢の客がつめかけます。
 銀座アピシウスの元総料理長で、パリでの修業経験を持つ高橋徳男さんは、著書の中でこう書いておられます。「日本で、生牡蠣が刺身のレベルにまで上がり、その専門店でもどんどん出現すれば食文化の幅も広がるのに…」
高橋さん、喜んでください。昨年には、東京に生ガキ専門店が2軒もできてるんですよ! 1軒は白金の『レカイエ』。もう1軒は、赤坂東急プラザ2Fの『ウォーターグリル・オイスターバー』。前者はパリ志向。後者はNY志向。どちらも、それぞれのスタイルを高度に煮詰めた、洗練された大人の店です。

、種類の多さという点で傑出しているのは、この2店に先立ち、1999年、東五反田にオープンした『オイスター・バー』。この店では常時十数種類の生ガキを食べ較べることができます。
日本のカキは三重の的矢産が有名ですが、基本的には水温の低い海の方が育ちがいいとされ、実際おいしいカキは、北海道の厚岸、岩手の赤崎、宮城の浜市など、寒い海に多いもの。有名なアメリカのワシントン(イチローのいるシアトルがある州)産も、作られてるのは寒い海。フランスでもニュージーランドでも同様です。
『オイスター・バー』では、カキの中で最も淡白でクセがない日本産マガキを初め、濃厚なメイプル(ワシントン産)、歯応えのあるヴロン(フランス産)、クセが強くカキ好きのためのカキと言われるフラミンゴ(ニュージーランド産)、海水のクロレラのおかげで外套膜が鮮やかな青色をしている幻のカキ、ブルー・ポイント(オーストラリア産)等々、世界のカキを食べ分けることができます。

ころでカキは、生でよし、炒めてよし、揚げても、鍋にしてもよしの万能の食材。しかも、血圧低下作用があるタウリン、A・B2・B12等の各種ビタミン、新陳代謝に役立つ亜鉛など、さまざまな栄養成分が詰まっており、『海のミルク』と言われるのもむべなるかな。それだけおいしくて栄養があるのに、生来貝好きのはずの日本人がこれまでイマイチ生カキを好まなかったのは、「カキは当たる」という風説ゆえ。

前は、カキが当たるのは鮮度の問題と考えられていましたが、最近の研究で、犯人はSRSVという小型球形菌であることがわかってきました。
カキは1時間に20・の海水を吸い込み、その中のプランクトンを食べていますが、生息する海水域がSRSVに汚染されていると、そのカキに元気があるないにかかわらず、SRSVはカキの体内に蓄積してしまうのです。
そうしたカキを人間が食べると、SRSVに弱いヒトの場合、24〜48時間の潜伏期間で、下痢、吐き気、発熱などの症状が現れ、通常3日以内で回復します。

毒を避けるには、きれいな海で採られたカキを食べるのが第一。SRSVは真水に弱いので、真水で洗うと(風味は落ちても)安全度は高まります。また、同じカキを食べても当たる人と当たらない人がいるのは、肝臓の解毒能力の差との説もあります。
フランスのレストランでは昔から、「ワインを一本飲めない客には生ガキを出すな」と言われています。つまり、それくらい肝臓の強い客でないとカキに当たってしまうから。それと、白ワインの持つ酸が、カキの毒を殺す作用があるからとも考えられています。

うそう、ワインと言えば、牡蠣には安シャブリというのが昔からの定説。この説を覆し、白ワインより日本酒、それも純米吟醸の天狗舞だと主張したのは、『美味しんぼ』の山岡士郎。いや、シャンパンが一番だ、と言い張るソムリエもたくさんいますし、冒頭紹介した『ウォーター・グリル…』では南仏のロゼを勧めています。どんな酒が一番合うかを試してみるのも、生ガキを食べる大きな愉しみの一つと申せましょう。

た、生カキの味を引き立てるには、チリソース、オーロラソース、フランボワーズソース、酢醤油、わさび、ポン酢など、様々なソースが考えられます。が、身を食べた後で、殻に残った汁をすするなら、レモン・すだち等のシンプルな柑橘類が一番。
 ちなみに、前述の高橋徳男さんによれば「こと牡蠣に関する限り、その殻に残った汁を吸うときの音はたてても不作法にはならないから不思議である」とのこと。汁はズルズルっと音をたててどうぞ。磯の香りがして旨いです。
『ウォーターグリル・オイスターバー』(東急プラザ2階 TEL:03-3539−1700)は、元エイベックス社員のオーナーが昨年から始めたNYスタイルのカキ料理専門店。三陸・北海道など、国産物にこだわった生ガキを5種類のソースで。カキ以外のメニューはすべてアメリカ指向。白で統一された店内は森田恭通デザイン。照明の暗さと満席の客が醸すさざめきが、大人の食事の楽しさを演出しています。スタッフは大半がキハチ出身。カウンター14席、テーブル18席。カウンター席がいい感じです。


ロックメロン
ワシントン産の岩ガキ。ややクセあり。


ヴロン
フランスでは高級ガキとして有名。
的矢
日本産のマガキの代表ブランド。
マクレガース
日本のマガキに近いニュージーランド産のカキ


『オイスター・バー』(品川区東五反田1-11-17 TEL:03-3280-3336)は、桜田通り沿いに99年にオープンしたカキ料理専門店。黒板に書かれたその日のカキの仕入れ表を見て注文。ロケーションが抜群です。

『レカイエ』(港区白金台- 5-3-8  TEL:03-6408-0879)フィレンツェの三ツ星レストランエノテカ経営の『カキの殻をむく人』という意味の魚貝専門店。カキは三重or三陸産。1個500円。シンプルにレモンで出します。

『貝作』(港区赤坂2-17-44  TEL:03-3586-8538)は、67年から八重洲で営業する貝料理専門店の支店。こちらの方が一軒家料亭で、風情があります。炊き込みご飯、茶碗蒸し等、日本古来のカキ料理はこの店で。

更新日2002年1月6日
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